シニア層で子どもの独立などをきっかけに住み替えを考える人は少なくありません。不動産流通経営協会が2019年に実施した調査では首都圏・関西圏などに住む45歳以上の男女5182人に住み替えの意向や経験の有無を尋ねたところ、「住み替え経験あり」「住み替え意向あり」の合計が計50.4%と半数を占めていたようです。
■中古マンションのコンパクトな間取りで家計の見直しを!
また、体が元気なうちに住み替えが出来ないと、子育て時代に購入したご自宅で過ごさなければならず、結果、そのまま終の棲家となってしまう事も非常に多いです。子供が巣立った後の2人で4LDK以上の不動産は不要だと思いますし、かえって結婚・出産を機に1DKという間取りだと不便だと思いますので、このような世代間の住宅交換的な考えが広がると不動産の取引や住み替えもし易くなるかと思います。コンパクトな間取りの中古マンションなら、住み替え後の支出も抑えられるので、年金暮らしとなった家庭の場合、家計の見直しになります。
■「ダウンサイジング」した住居面積が良い?!老後の生活には!
現在の住居面積と住み替え先の希望面積をそれぞれ聞いた設問では、現住居が平均89.5平方メートル、住み替え先は62.1平方メートルという結果になったようです。老後の住まい選びで現在の住居に比べて広さを狭くする「ダウンサイジング」を重視する傾向がうかがえ、持ち家に住む人が希望する購入価格は平均3224万円となっています。やはり一般の家庭で不動産取引が多い価格帯は「3000万円台」と言われますので、価格高騰が続く不動産市場ではありますが、やはり「3000万円台」で購入できる物件は魅力的です。東京都や大阪府の中心部に立地する新築マンションは手が届きにくく、郊外のターミナル駅から1~2駅ほど外すと価格が下がります。しかし、資産価値はターミナル駅付近のものの方が下がり難い為、その視点も重要となります。
例えば京王線府中駅(東京都府中市)から1駅の東府中駅、JR大宮駅(さいたま市)から1駅の土呂駅といったエリアでは2LDKの新築で4000万円前後、中古なら3000万円程度で購入できるようです。
■コンパクトな生活に変える事で家計の見直しができる!
コンパクトなマンションに住み替えると家計の支出を減らせる可能性があります。例えば光熱費です。マンションは戸建てに比べ一般的に部屋数が少なくなるほか建物の断熱性が高まるため、電気の使用量は減りやすい傾向があります。また、日本生活協同組合連合会が2019年9月に発表した「電気・ガス料金調査」によると、戸建ての電気料金は平均で月8546円、集合住宅(マンション)は6477円だったようです。単純計算では年間で2万5000円弱の差になり、集合住宅の方が家計の見直しに繋がる結果となっています。契約電力を戸建てで一般的な60アンペアから30~40アンペアにすれば基本料金を抑えることも可能ですが、一度に電力が集中するとブレーカーが落ちる機会も増えてしまいます。
コンパクトなマンションに住み替えると火災・地震保険料も少なくなる可能性があります。補償対象の面積が少なくなるためであり、都内で築30年・120平方メートルの戸建て(耐火構造)から築15年60平方メートルのマンションに移る場合、5年間の地震保険込み保険料が40万円以上下がるようなケースもあるようです(補償内容の確認も必要です。
このほか子どもの独立などで不要になった家財を住み替えの際に処分すれば必要な補償額を引き下げられ、また鉄筋コンクリート造といったマンションは木造戸建てに比べ保険料を抑えやすい傾向があります。
また住み替えを駅近マンションに引っ越す事で、自動車を手放すのも一案となります。マイカーは自動車税を年1回払うほか、2~3年ごとの車検時に点検・整備費や自動車重量税、加入義務のある自動車損害賠償責任保険(自賠責)の保険料などが発生します。事故の際に自賠責では対象外の補償に備える任意保険の保険料なども必要になりますので、老後の生活を考え、車が必要なときはカーシェアを使うようにすれば、かなりの節約にもなります。
■コンパクトな生活に変えても・・・。「支出が増えるもの」もある!
一方、集合住宅(マンション)は建物と土地にかかる固定資産税は一般的に戸建てに比べ高くなります。建物の税額を算出する際は経年劣化を考慮するためであり、マンションの耐用年数は47年が一般的で22年(木造)などの戸建てより長くなります。それぞれの購入価格、築年数、構造などで様々ですが、住み替えで負担増になることもあります。
住み替えの資金は持ち家の売却金と貯蓄などの手元資金で賄うのが基本となります。シニア層でも住宅ローンを組むことは可能ですが、返済が老後の生活の負担になりかねません。
手元資金だけで不足するなら、リバースモーゲージを利用する手もあります。自宅を担保に融資を受けて利息を毎月払い、元本は死後に自宅売却などで返す。ただ子などに自宅を相続させることはできず、返済期間が長引くと利息総額が膨らみやすいといった注意点がありますのでご注意下さい。
いずれにせよ、ダウンサイジングした不動産で家計の見直しが可能となる事はご理解いただけたのではないでしょうか?
今後の参考にお役立て下さい。
法人営業部 犬木 裕