2021年6月22日(火)の日本経済新聞の朝刊に「土地・建物に官民共通ID」の記事が出ていました。内容を確認してみると、不動産購入時に把握をしておいて欲しい内容もございましたので、ぜひ、今後の参考にお役立ていただければ幸いです。
■官民共通IDで不動産流通活性化を目指す?!(土地・建物)
国土交通省は全国の土地や建物の情報を共通IDで一元的に把握できる仕組みをつくる。民間の売買データベースと国の登記簿などを照合しやすくするようです。不動産事業者が消費者の求める情報を調べやすくなり、取引を円滑・透明にできるようになります。現在はこのようなデータベースが無いために、不動産事業者も消費者からの質問に簡単に答えられないケースもあり、かなりの時間と手間が掛かっています。人工知能(AI)による資産査定など新サービスの普及を促し、中古住宅市場を活性化できれば空き家対策にもつながるっていく事を想定しています。
※米国の一部の州で事業者が共通IDを活用した不動産データ基盤を整備していますので、それを参考にされるようです。
また、本件については有識者らによる検討会を設け、2021年度中にデータ連携の指針をまとめ、2022年度の早期運用をめざされるようです。不動産取引で融資する銀行など金融機関にとっても、物件の担保価値を評価しやすくなると見込まれています。正直、不動産の取引は高額物件も多く、金融機関との調整も必要となります。
■官民共通IDの普及を阻害する要因とは?!(土地・建物)
不動産の分野では、流通物件の成約実績を蓄積する事業者用の検索システム「レインズ」があります。また、多くの不動産事業者は管理物件の改修履歴など独自のデータベースを持っている業者もいます。その為、消費者に提供するのにバラバラの情報をひもづけて提供する事に懸念材料が多く、今回の官民共通IDの構想が上がったようです。
国土交通省は共通IDをつくり、データ連携を進める狙いのようです。国の法務局が管理する不動産登記簿にある13ケタの番号の活用を想定し、業界各社には物件の新規登録やデータ更新の際にIDを反映するよう求める予定です。対象となる土地・建物は全国2億件超に上るようで、このデータベースが出来る事により、不動産流通の活性化につながってくれる事を願います。
導入には事業者ごとのシステム改修が必要になる見込みですが、登録項目などの詳細は検討会で議論するようです。登記簿には個人情報も含まれることから、データ連携が個人情報保護法に抵触しないようなルールを想定し、あまり時間を掛けずに調整を行う様子を見ると、かなり本腰で共通IDを普及させる事が考えられます。
■共通IDを普及する狙いとは?!スクラップ&ビルド時代の終焉?!
日本は中古物件の取引が少ないというのが現状です。背景には「設備状況や価格の妥当性が分からない、建物の評価方法が明確でない」といった事があり、消費者も判断に迷われるといった事が多いです。データ連携が進む事により、事業者は消費者のニーズに応じた様々な情報を提案できる事になり、データ量が増えてデータ分析が容易になる事によってコンピューターが迅速に資産価格を見積もる「AI査定」などの精度も高まる事が期待されています。
消費者向けの住宅情報サイトでは、同じ物件の広告でも仲介業者が異なると重複して分かりにくいといった指摘が少なくない為、このような共通IDを活用すれば同じ物件を整理して見やすくしたり、問い合わせをしなくても成約情報を即座に反映させたりする事ができるようになります。消費者がスマートフォンひとつで必要な情報にアクセスできるような新サービスの普及を後押しする予定です。
海外では米国の一部の州で事業者が共通IDを活用した不動産データ基盤を整備していますし、英国は公的機関がデータを共有する仕組みがあるそうです。各国で取引制度や商慣行が異なり、データ収集や活用、提供方法の課題はあるようですが、官民共通IDが取引の基本なる事で不動産トラブル案件も減る事が予想されます。
住宅販売に占める中古の割合は米欧が7~8割なのに対し、日本は1割台にとどまっています。政府は中古の利活用を促してきたものの近年はほぼ横ばいであり、今後の人口減少の加速を考慮すれば、空き家対策の観点からも良質な中古住宅が流通しやすい環境の整備が一段と重要になります。このような官民共通IDが2022年に使われるようになることで不動産の透明化、流通活性化につながってくれることを期待しています。
今後の参考にお役立て下さい。