2020年9月23日に相次ぐ災害を受け、国土交通省は住宅政策を軌道修正するといった報道が出ました。内容を見てみると、2021年度にも災害の危険が高い地域を改修費用の補助などの対象から外す方針というものでした。個人的にはいよいよ、人口減少社会を見据え、災害復興等が掛かりにくい状況を考慮した対策を打ち出してきたと思っています。つまりは、災害危険エリアは不動産の価値としてもほぼ見出されない状況となる事が予想され、「ババ抜き」状態となり、そのような不動産を持ち続けると、いつかは売る事も出来ず、毎年固定資産等の支払いは続けなければならない「負動産(持っているだけで資産をマイナスにする不動産)」となる事が予想されます。
〇住宅購入を検討される際には「災害危険エリア」+「立地適正化計画」のチェックは必須?!
現在は立地にかかわらず省エネルギー化や長寿命化の助成、税制優遇といった公的支援を受けられています。支援の線引きによって、より危険の少ない場所に住まいを誘導するといった政策へと転換する事のようです。かなり前より、立地適正化計画を発表しています。立地適正化計画は都市再生特別措置法に基づき、市町村がつくる計画です。
令和2年7月31日時点で全国542の自治体が立地適正化計画の作成を行うことを表明しており、339の自治体で具体的な取り組みが公表されています。
立地適正化計画では、住宅を集める「居住誘導区域」(住む場所を集約)と、店舗や福祉施設、教育機関などの立地を促す「都市機能誘導区域」(仕事をする場所を集約)が設けられます。簡単に言うと、街の中で「今後も活用していく区域」と「使わない区域」を線引きしましょうという制度になり、今回の税制優遇の除外エリアとの線引きをしたエリアでの不動産が求められる時代へと変わっていく事が予想されます。
人口減少時代では社会資本を投下する対象を絞らなければ、自治体の財政が破たんしてしまう恐れがありますし、今年は新型コロナの影響により、経済不況となり、早期の見極めをしていかなければ、国の存続にも影響を及ぼしかねません。
住宅購入の場合、検討しているエリアの自治体が立地適正化計画の取り組みを行っているかどうかにプラスして、「災害危険エリア」の有無を必ず把握していただく事をお勧め致します。
〇住宅購入を検討される際には、「災害レッドゾーン」のチェックもされる事をお勧め致します。
ちなみに、今回の税制優遇等の支援の見直しは、たとえば土砂災害防止法に基づく特別警戒区域を念頭に置いているようです。この区域は崖崩れなどの危険が高く「災害レッドゾーン」とも呼ばれています。既に学校や商業施設の開発は規制しています。個人が自分で住む家屋の建設は禁じられておらず、現在は国内の0.4%にあたる約20万世帯があるようです。
また、全世帯の23%は津波や浸水などを含め何らかの災害の危険がある地域に住んでいるようなので、このエリアは今後の規制エリアに該当する可能性があります。その為、これから住宅購入をされる際には、このようなエリアは注意をしていただく事をお勧め致します。近年の異常気象の影響により、年々、災害の規模は大きくなっています。1時間に50ミリ以上の雨が降る回数は、この10年で1.4倍にまで増えているようです。
2018年の西日本豪雨では約7千の住宅が全壊、1万1千が半壊。7月の熊本豪雨では8千以上の住宅が浸水した。もともと浸水が想定されていた地域と実際に浸水被害が起きた地域は重なっており、事前の避難や安全な地域への移転の重要性が浮き彫りとなっています。つまりは「歴史は繰り返す」といった状況です。
国交省は住宅政策の基本として5年ごとにまとめる「住生活基本計画」を20年度末に改定し、対応を急ぐようです。新計画には安全な立地への住宅誘導を進める方針を盛り込まれる予定です。
現在、耐震や省エネの性能が高い住宅は「長期優良住宅」と認定し、新築や改築の際に税制優遇や補助金を受けられるようにしている。太陽光発電の有無や窓の断熱性を基準にした助成制度などもある。
いずれにせよ、これからの住宅購入はこのような災害危険エリアや立地適正化計画の除外エリア(規制エリア)は、次の買い手も付きにくくなる事が予想されます。もしご自身が現在規制エリアに住んでいるようでしたら、今だったら、買い替え等が出来るかもしれませんので、このような情報も今後の参考にお役立ていただければ幸いです。
法人営業部 犬木 裕